平凡だけど特別な。 -31ページ目
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パズルを言葉に残しましょう。

今、流行っているらしい「ブログ」

私も流行りに乗っかって、作ってみました。

でも、何を書こう?

サイトの日記を書くのも苦労する時があるのに(笑)

同じ日記を綴るのでは、意味がない。

ということで、こちらのブログでは「テーマ」を持つことにしました。

テーマは「物語」

最初は愛すべき私の家族たちからにしようと思ってます。

今を生きるもの。
過去を生きるもの。
未来を生きるもの。

私が出会うことの出来たいろんな命の物語を

時には笑いながら。
時には懐かしく思い出しながら。
時には泣きながら。

私のサイトである「あにまるぱずる」のその一片一片を少しづつ言葉に残していきたいと思います。

これを読んでくださったあなたの心に、私の愛すべきコたちの生きた姿が少しでも残ればいいなと思います。



さて、まずは、私がはじめて自分で飼ったわんこ「チャチャ」さんの物語からいくのが筋でしょうかね。

チャチャさんは、私が高校1年の時に迎えたコです。血統書には「エルザ」とありました。お金は伯父に借りて、一生懸命アルバイトをして返したことがつい昨日のことのようです。

チャチャさんは、私にたくさんの愛をくれて、2000年12月24日。
20世紀の終わりと共に、14年近い生涯に幕を降ろし、新たな世界へと旅立っていきました。

実は、これから綴る物語は、チャチャさんが生きている頃に、以前公開していたサイト上に掲載をしていたものです。

チャチャが年を重ねていくたびに、私は不安の中にいました。

チャチャを失うことがとても恐かったのです。
チャチャはずいぶんと頑張ってくれたと思えるのは今になったからです。

あの頃、時々、私と見つめ合って、チャチャの瞳が潤むことがありました。

わんこって泣くんです。

そのたびに、私もチャチャを抱きしめて泣きました。

いなくならないで、って心から願っていました。

時の記念日というのを聞いて浮かんだ物語。

チャチャさんは弱い私を眺めながら、きっとこんなふうに思って頑張ってくれているんじゃないかなって、ふと思ったのです。

私はけしてチャチャさんにとって最良の飼い主ではなかったと思う。

でも、チャチャさんがいてくれたからいろんなことを頑張れた。強くなれた。

いつも私を待っていてくれたチャチャ。

ありがとうね。大好きだよ。今も昔も。



時の記念日-あの頃-



昔…まだ、チャチャと呼ばれてはいなかった頃…暖かい温もりの中で、兄弟姉妹と一緒に優しい時間を過ごしていた頃…約束したことがある。

姉妹の中でも一番やんちゃだった末っ子が、新しい飼い主がそれぞれ決まった夜に、
少し不安になっていた私達に言った言葉。

(ねえねえ…私達、外の世界へ行けるのでしょう?そしたら、オトナになったらまたここに帰ってこようね。パパとママがおじいちゃん、おばあちゃんになった頃、きっと寂しくなるからここへ帰ってこようよ!)

私達は…まだほんの子供だったから、「ここへ帰ってくること」がそれほど難しいこととは思わなかった。

離ればなれになってしまう寂しさが、ついみんなを頷かせた。

(うんっ。そうしよう!そしたらパパもママも泣かないですむもんね!)

(私達もがんばれるね!)

(帰ってこようね。約束しようね!)

みんなで、手を重ね合って眠った最後の夜。また会えると本気で信じていた夜。

次の日、私は、新しい飼い主に引き取られた。

入院したり、病院へ通ったり…嫌なことがたくさんあった1年目は、本当にその約束を信じて頑張った。

こんなところで負けたりしない、みんなに会うのだと…ずっとずっと思ってた。

でも、新しい飼い主と新しい生活にすっかり慣れた頃…少しずつ…少しずつ…約束は、記憶の片隅に押しやられて行ってしまった。

今になって…なぜ突然思い出したりしたんだろう…。

そんな約束は、私達が離ればなれになったあの日から、叶えられるはずのない約束だったのに…。

パパもママも…きっともう天に還っているはずだ。

だって…私がもうおばあちゃんになってしまったのだから。

さっき、帰ってきた飼い主が頭を撫でながら、今日は記念日だって言っていたっけ?

出来るなら…叶えたかったけれど…幼い頃の約束を。もう、無理だ…。

だって、帰る場所すら分からない…。

                    ☆

(…ザ!…エル…!)

声が…懐かしい声が聞こえた気がした。風の声だろうか…。

ぼんやりとそう考えたとき、はっきりと私の耳に届いた声。

(エルザ!)

それは、あのやんちゃな末っ子の声だった。

エルザ…もうそう呼ぶ人はいないけど…それは私の子供の頃の名前。

(ミル…)

幻のように頼りなく、ぼんやりとしたミルの姿が私の前に現れた。

(ミル!もう…会えないと思ってた)

(約束したじゃない!また、ここに、帰ってこようねって!)

ぐるんと景色が歪んで…ミルははっきりとその輪郭を現した。

そして…私達は帰ってきていた。あの、パパとママと暮らした懐かしいふるさとへ。

(エルザ…老けたね)

ミルが笑っていた。そういうミルもかなり老け込んでる。

(ミルだって…私のこと言えないよ?)

(そうだよね。だって…もうおばあちゃんだもんね!)

元気さだけは変わらずに…ミルは私の顔をぺろんと舐めた。

顔を舐められるなんて久しぶりで、私はちょっと照れくさかった。

(さ、行こう。みんなも来てるよ)

ミルが、歩き出すのを追いかけながら、自分でも驚くほど、落ち着いていた。

みんなも来てるよ。

叶えられるはずのない願いだったはずなのに、今、私は、みんなが来ていて当たり前のように感じている。

みんな、いるのだ。そう…いるはずだ。

だって、約束したのだから…。

パパとママが住む部屋の見慣れた扉が現れ、ミルが前足で押すと扉は軽く開いた。

そして…懐かしい風景。パパとママと…兄弟姉妹達。

(エルザ!待ってたよ!)

みんな老けてるけど…変わらない優しさと温もりが、そこにあった。

懐かしくて…涙が出そうだった。

みんな、帰ってきたんだ!約束を忘れたりしなかったんだ!

パパとママが、私達の顔をぺろぺろと舐めてくれた。

いつのまにか…私達はみんな子供だった頃に戻っていた。

姿も心も…みんな懐かしいあの頃へと…。

私達は、ママのお腹の下へ潜り込んで、暖かいミルクを飲んだ。

お腹いっぱいになって、心地よい眠りに襲われ、私達は温もりの中で眠った。

あの最後の日のと同じように、手を重ね合わせて眠った。

約束は…守られたんだ…。不思議な安堵感の中で、私はいつのまにか深い眠りに吸い込まれていった。

                  ☆

(チャチャ?)

手を重ね合わせた温もりに、ふと目を覚ました。

眠りに落ちた、あの懐かしい場所ではなかった。

目の前で、大きな手が、私の手を撫でていた。

(どしたの?涙溜めちゃって…)

夢…?

ううん…ううん。夢じゃない。少なくとも、私には。

(チャチャ?)

心配そうな飼い主の手を安心させるようにぺろぺろと舐めた。

ここは、私の家。時々ふるさとを懐かしく思うけど、ここが、今の私の家。

私は本能で、みんながもうこの世界を旅立ってしまっていることを知った。

いつか…私も、またあの懐かしい場所へ還るのだろう…。

でも、あと少し…。もう少し、ここにいる。

この心配そうな瞳に強さが宿るまで…もう少し…私はここにいるの。

パパ、ママ。みんな。

いつかまた、会えるから、ね。心配しないでね。

チャチャは今日も、元気です。




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